第2回 相手を思い通りに動かす戦術論
第1回は、交渉術の根幹と大まかな考え方についてご紹介しましたが、今回は、時間や場所の設定などを中心に、交渉が始まる前に準備しておきたい点について触れます。
交渉は圧倒的に後攻が有利
相手方の出してくる「手」が何かを見極めた上で、自分の手を考えていきましょう。
先攻を選んでしまうと、こちらの出す情報を前提に、相手方は自分には損とならない条件を設定できることになります。
特に、価格交渉で相場がよく分からない場合、こちらから価格を提示するのは絶対にやめましょう。相手に価格を提示させ、そこから検討を始めます。
初対面で相手の交渉力を見抜く術
こちらの不満をまず聞いてくる相手には要注意。必ず聞き返し、要求は相手から出させましょう。
「お忙しい中、お時間をとっていただいてありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ」
「で、今回、何かご不満はありますか?」
こういう切り出し方をする人間は、交渉がどういうものかよく知っている人間の可能性が高いので要注意です。
こういうときに、素直に不満をつげたらアウトです。逆にこちらから聞き返すのがセオリーです。
交渉は一人で行うもの
交渉担当者が能力を最大限に発揮するのは、一人という極限状態に追い込まれた時です。
複数のメリットとして、片方を記録者として専念させられることがあります。
しかし、相方を頼ったりすることの安心感が油断を生じさせることがあります。交渉担当者の能力を最大限に発揮するには、一人という状況に追い込まれるのがいいです。
相手方の窓口は必ず一つに絞る
交渉の相手は本人でなくてもいいが、一人に全権委任であることを明らかにさせましょう。
そうしないと、交渉が無限に続く可能性があります。
例えば、委任状を出させて、それ以外の人物が出てきても絶対に応じないようにするなどです。
税務調査でも、税務代理権限証書が提出されている税理士以外は調査立会が認められていません。
誠意という言葉の罠
「誠意を見せろ」と言われたら、逆に具体的に問い詰め、相手を交渉のテーブルに引き戻しましょう。
ちなみに、この言葉が出てくる時は、相手方はほぼ100%追い込まれています。
この場合、ストレートに反応しないことです。具体的にどのようなことなのか明確にし、つぶせるものは冷静に潰して追い込んでいきましょう。
場所の設定からすでに交渉は始まっている
交渉の場はホーム(自分のオフィス)が一番。最悪でも中間地点か公共の場にしましょう。
スポーツの試合をみても明らかですが、やっぱりホームが断然有利。
理由はいくつかありますが、座る場所の確認、トイレを借りる時など、相手に確認や許可を取らないといけないことなどが多く、アウェーだと不利な要素が多いです。
また、公共の場であれば、相手方が激昂したとしても暴力的な行為に出にくいというのもあります!
借りではなく貸しを作れ
お互いの貸し借りのバランスが、交渉のペースに直結します。貸しはつくれるだけ作りましょう。
例えば、お互いのオフィス以外の場所で話をするときは、会計はすべてこちらでもつなどです。
ポジショニング争いの段階では、相手からのお茶や菓子にはけっして手を付けないことです。
面談の終了時間を決めて望むな
面談の終了時間を決めて交渉に臨むと、それが弱点となり、相手につけ込まれてしまいます。
交渉面談は一日のスケジュールの最後にしましょう。
やむを得ない場合は、大義名分(相手に共感してもらえるもの)を使い切り上げます。
大義名分は、相手の価値観に合うものにしましょう。
極端な例ですが、ヤクザ相手なら、依頼人に差し入れにいくからなどの理由を使います。
相場観をもとに具体的なゴールを設定する
相場観によって決着を予想し、目標を立ててから交渉に入りましょう。
相場観は重要です。相場観を養うためには、先輩や上司の交渉の進め方を見たり、経験談を聞きましょう。
普段から人脈を使い情報収集できるように備えておきましょう。今ならネットやオンラインコミュニティなど便利なツールがあります。
交渉開始前にまとめておく四つのポイント
前述の相場観と並んで、交渉開始前に考えておくべきポイントがあります。各ポイントに沿って事前に準備しておきましょう。
1 今回の紛争に対する自分なりの分析
2 交渉がまとまらず裁判になったときの決着
3 腕利きの示談屋が介入した場合の慣習的な決着
4 今回の交渉の相手方が望んでいるであろう決着
これに加え、「交渉しても無意味ではないか」という判断もあるということを頭に入れておきます。
対組織の交渉を成功させるターゲットの絞り方
対組織の交渉では、相手方の組織がどういうタイプなのか知ることが決定的に重要です。
民主的な組織なのに形だけのトップにターゲットを絞ったり、ワンマン型なのに複数の幹部のご機嫌を伺うのはスジが悪いです。
ちなみに、行政とは交渉しないことです。理由は先例と法令がなければテコでも動かないからです。
交渉を優位に運ぶ雰囲気づくり
交渉に臨む場や環境は重要です。ハード面をきちんとすれば、交渉の中身にも好影響が出ます。
例えば、何百億円が動くような大きな取引の話を、安居酒屋で焼き鳥をほおばりながらすることはないでしょう。前述しましたが、交渉の場所はよく考えて設定しましょう。
体力、精神力もかけひきの重要な要素
交渉には、とにかく動き回れる体力と、どんな相手とでも一対一で話せる精神力が必要です。
時間も、相手方とある程度妥協した時間に行うことが一般的ですし、場所も、アウェーや中間地点に行かないといけないことはザラです。
更に、実際の交渉の場においては、相手の話を聞きながら、少しでも弱みを見つけたらそこを突く、集中力と反射神経が求められます。
「かわす」技術を覚え、場数をこなしましょう。これを一気に身につける最良のものはスポーツです。
スポーツの習慣がないひとは、ランニングでも十分です。健康のためにもスポーツする習慣をつけましょう!
まとめ
今回は交渉に入る前の前提として、必要な情報をご紹介しました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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