第5回 ピンチを切り抜ける切り札の一手
今回で最終回になります。
交渉が停滞してきたときの突破法
平行線を破るには新しい譲歩を作り出します。相手方が困っていることはその大きなヒントです。
交渉が平行線をたどる。ままあることですが、こうした状況を突破してこその交渉術です。その突破口は一つしかありません。
それは、こちら側の現実的な損失を伴わない、新しい仮想の譲歩をいかに作り出すかということになります。
こちらの主張を認めるか、相手方の主張を取り下げるかしないと、生じるであろう不利益をとにかく考え出します。
相手方の困っていることをサポートすることもあります。こちらにとってはたいした負担ではないが、相手方にとっては大きな利益になるものを選択しましょう。
交渉の切り札の効き目は衝撃度で決まる
法的な手続きや人脈は交渉の切り札になります。しかし、使わずに済めばそれがベストです。
・お互いにどうしても譲れず、交渉が決裂
・相手方の要求が、あまりにも法外
・相手方が明確に違法行為を行っている
こういった理由がない限りは、法的手続きという伝家の宝刀は抜かないことです。
法的手続き以外でいうと、相手方が許認可業の場合なら、監督官庁に働きかける、本店に苦情を入れるなど、相手の弱点を突いていくことになります。切り札は意外であればあるほどよいでしょう。
厳しく見える交渉も、視点を変えれば突破口が見えてくる
絶対的に不利な交渉案件はありません。100対0を80対20にできれば成功のうちです。
スジが悪い、妥協の余地はない、という案件でも、なんとかこちらの利益になるようもっていきましょう。
ここでも、相手方のごちゃごちゃした言い分を自分の言葉に置き換え、主張と譲歩可能なものの二者択一で振り分けていきます。
互いの主張の隔たりにばかり目を奪われず、相手の本当の望みがなんなのかじっくり考えましょう。
飲み食いしながら交渉はできない
交渉には自分を偽り、ある役柄を演じる面があります。酒食の席は素になりやすいので不向きです。
交渉中は、相手方との信頼づくりには重きをおかないようにしましょう。信頼と不信の間のギリギリの線を保持しておけば十分です。
特に、物を食べる姿は、本能に従って突き動かされている人間の姿が見えてしまい、どうしても鈍臭い印象を与えてしまいます。
また、酔ってくると、意識していなくても、どこか生身のだらしない部分が顔をのぞかせます。
素の自分を曝け出すことは、交渉においてはマイナスでしかありません。
交渉のラストシーンは握手で締める
敵味方がなくなるほど完全な解決が交渉の理想。相手と握手ができる間柄を目指しましょう。
双方が互いを言いくるめたと思っているようなケースが一番幸せです。
現実には多くは一部解決で、両者が納得した解決にならないことが多いでしょうが、理想はもっておくべきです。
交渉力アップのカギ
交渉力とは、結局は、相手方の弱みを見つける力です。そして、交渉力アップのカギは、多様な人との出会いです。多様な人と、数多く接した経験があればあるほど、人の弱みはよく見えてくると筆者は言います。
交渉上手と呼ばれるためには、いかなる層の、どんな育ち方をした人とあったとしても、一応の話ができる必要があります。
筆者はこれを身につけるためには、思春期を迎える幼少期・少年時代の過ごし方が大事であると言っています。
暴走族・ヤクザ・右翼と入り混じって生活をした体験などが貴重であったとのことでした。
また、他人以上友達未満の距離感を保てる「顔見知り」を作ることが大事とも述べています。
ここでは、初めて出会ったときの印象をより深いものにする工夫をします。出し惜しみせず、自分の人となりをさらして、5年後、10年後でも困った時にはコンタクトが図れるレベルの関係をつくるよう心がけましょう。
関係を持続させるためにあえて表面的な儀礼上の連絡をとる必要はありません。その時間は、新しい別の人と出会うことに使いましょう。そもそも、出会った人全員と一生付き合うことなど不可能です。
まとめ
以上、5回に渡り、ご紹介してきました。
老若男女あらゆる立場の人が、大なり小なり日常的に交渉を行なっています。人によっては、それってどうなの?というものもあったかと思います。
そういう場合、無理に使う必要はないです。ただ、自分が使われることがあるということで、覚えておいて損はないと思います。
記事中「交渉とは不満足の分配作業である」という交渉の本質を捉えた言葉をご紹介しました。この言葉どおり、両者とも満足できる交渉というのは、本質上難しいことです。しかし、今回ご紹介してきた心構えやテクニックを使うことで、皆さんが、相手方も含めて「やりきった」と言える満足感を得ることは可能になると思います。
原著には、他にも使えるテクニックが載っており、実際のやりとり例も多く記載されています。
中古でしか手に入りませんが、気になる方は是非手に取って読んでみてください。
最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。
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